今年の1月、息子のトシくんは30歳になりました。
自分が30歳になった時にも、ある種の感慨……「このオレがもう30かよ」という悲しさのようなものがあったけど、「トシくんが30か〜」と思うと「オレも歳取っちゃうわけだよな〜」という思いとともに、当時のことが自然に思い出されて来ます。
今からちょうど30年前に、私は保険屋さんになりました。
その時、トシくんは生後半年でした。
私は、筆で食えるようになるために保険屋になりました。
だから、「週に3日だけ保険の仕事をする。他の4日間は部屋から出ずに、筆を手にする」と決めていました。
でも、それだけでは父ちゃん失格です。
生後半年のトシくんがいるのだからね。週3日の営業で全社員平均の売り上げ(年収1200万)をあげることも、必須の目標でした。
それが私の「ありたい姿」でした。
保険屋さんになって最初の1ヶ月間の研修を終えると、いきなり自由の身になりました。
働き方も、働く時間も、収入も、すべて私の自由です。
週に3日だけ働き、4日間は筆を手にする……という生活が始まりました。
とは言え……受講生からも聞かれたことがあります。
「週に3日だけって……不安はなかったんですか?」
私はこう見えて繊細な人間ですからね、あの日のことは今でも覚えています。
それは、営業が始まって3日目。
初めての「部屋から出ずに、筆を手にする日」を迎えました。
スウェット姿のまま、書道具を机の上に出し、墨を磨り始めると、「大丈夫かな?」「ヤバくね〜か?」という思いが込み上げて来ました。
そりゃそうですよ、今までセールスなんてやったことがない人間が、他のみんなは朝から仕事をしているというのに、部屋から出ずに終日筆を手にしようとしているのですから。
でも……「そのために保険屋になったんだろ!」と自分に言い聞かせました。
すると「やってやる!」という思いが湧き上がって来ました。
墨を磨るほどに、心は落ち着いて来ました。
不安感は徐々に減り、それにつれて幸福感が増して行きました。
それが、私が「ありたい姿」を手に入れ始めた瞬間でした。
以降は週に4日以上、安心して筆を手にできるようになりました。
「ありたい姿」を手に入れた瞬間
