女性の体重と「老後」の関係性?

生命保険営業の本質!

広告代理店でマーケティングプランナーをやっていた頃・・・もう四半世紀ほども前の事になりますね・・・非常に興味深いマーケティングデータを見たことがありました。

それは、「女性の体重に関する、男女の感覚格差」のデータ。

マーケティングデータですから、ちゃんと実験するんですよ。
10人の女性に体重計に乗ってもらって、サバ読みなしの体重を計測してから、それぞれに自分の「理想体重」を書いてもらう。

で、その紙を見せずに、10人の男性の前に立ってもらって、「この女性の体重と理想体重の推測、そして、あと何キロ増えても、男性の目から見て問題ないか」を聞くのです(実際はその他にも質問項目はあったけど)。
これを何グループも繰り返して、結果の平均値を出す。

結果は、男性からすると「何の問題もなし!」の体重は、女性が申告した「自分の理想体重」よりもプラス8キロでした。
つまり、そこからさらに何キロか増えたとしても「全然大丈夫。許容範囲内です」なんですね。

・・・「テメ~の外見を棚に上げて・・」という女性の声も聞こえて来そうですが、私が言ってるワケじゃないですからね。
あくまで実験の結果だし、だからこそ「ものすごいデータだな~」と感じたのです。

さらに、理想体重よりもプラス5キロ近辺が「モテゾーン」。
つまり「この子、好き!」の度合いが増すという結果が出ていました。

これを読んで「なるほどね。ワカルワカル」と感じた男性の方、多いと思いますよ。
「細い子が好み」っていう男性は、実は全体の1割少々しかいなくて、ほとんどの男は、「スタイル抜群な女性が好きなのは当然だが、ぽっちゃり度合いが増しても、やっぱり好き」なのです(確かこれが8割程度だった)。

で、ここからが本題。

約8割の男が、ぽっちゃり系の女性が好きだとしても、女性に向かって安易に、

「ぽっちゃりしてて可愛いね」とか、さらには
「オレ、太目の方が好みなんだよね」

なんて言ったら、それでムカついたり傷ついたりする女性も何割かは居るはずなんですよ。
「そう言われても・・・全~然嬉しくない」という女性は、かなりの割合で居るはずなのです。

その結果、「あの人、好きじゃない」「無神経な男、嫌い」「ホント、男って、女心をわかってない!」「ウザい!」になってしまうワケですよ。


生命保険セールスの場においても、似たような言葉があるんですね。
それは「老後」


セミナーやセールスコーチングを行う中で、ほぼ全員の方が、アプローチでもプレゼンテーションでも、「老後」という言葉を使います。
何度も何度も・・・。

私、ずっと、それを見るたびに違和感を感じていたんですよ。
「なぜ、違和感?」って考えてみたら、私自身は、セールスの場で「老後」という言葉を使った記憶がないからなのです。

念のため、私のメールでのプレゼンテーション原稿を確認してみたら、「老後」という言葉は1ヶ所しか出て来ませんでした。
とっても長い原稿ですよ。プリントアウトするとA4で30枚以上になってしまうらしいです(ってお客様が言ってました)。
しかもメモ帳ソフトだから、文字量は1枚でワード原稿の2倍くらい。
それでも1ヶ所だけでした。しかも、ごくごくあっさり「老後資金形成にも役立ます」とあるだけ。

もちろんその10分の1以下の言葉しか使わない対面でのセールスにおいては、「老後」という言葉は一切使いません。
なぜ私は使わなかったのか?
それはいつも「相手がどう感じるか」を考えていたからです。

私は今、50歳を過ぎましたが、この歳になっても「老後」には興味がありませんし、老後なんて来ないって思ってます。
ましてやソニー生命時代は30代でしたから、老後なんて想像もしませんよ。

お客様は同年代が多かったから、その人たちだって同じはずです。
「老後」なんて言われても、響くはずがありません。
むしろ「自分とは関係ない」という感覚を抱かせるだけ。
それは成約率に下げることにしかつながりません。
だから、使わなかったのです。

・・・と思っていたら、2年ほど前に読んだこの本に、まさにそのことが書いてありました。

「団塊シニアマーケティング」ダン・ケネディ/チップ・ケスラー★

ダン・ケネディおじさんは、こう言ってるんですね。
「老後」だなんて、誰も思ってないし、考えてない・・・って。
今、お金を持っているシニア層に売りたいのなら、「老後」なんて言葉は使っちゃいけないし、思考のキーワードから外さなきゃダメだって。

しかも「老後」という言葉に最も嫌悪感を感じるのは、60~65歳なんだそうです。それより若いと「関係ネ~」だし、それより上は「まだ絶対に老後じゃない!」と思い込もうとする。

つまり、どの層に対して使っても、響かないか、嫌悪感を感じさせてしまう言葉なのです。


会社の教える「保険屋言葉」って、広告代理店のマーケティングプランナーから転職した私にとっては、「キモい」「響かネ~」「使えネ~」のオンパレードでした。
「こんな言葉使ってたら、売れネ~だろがっ!」ばっかしでした。

私たちのビジネスにおいては、「言葉」こそが商品です。
それなのに、陳腐で、つまらなくて、響かない言葉ばかりの台本を喋っていたら、売れるはずがありません。

私たちのビジネスにおいて、「言葉の精査」は、プロスポーツ選手のトレーニングと同じです。
それなのに、考えもせず、精査もせず、勉強も練習もしないのであれば、プロとして食って行けるはずがありません。

安易に「老後」という言葉を使ってしまうのは、そうした姿勢の象徴とも言えることなのです。