生保セールスになる前、私は広告代理店のマーケティングプランナーでした。
広告代理店から生命保険会社へ・・同僚たちは一様に驚きました。
なぜなら、広告代理店の人間にとって、保険会社や銀行、証券、不動産といった「金融系の会社」は、転職先として「最も遠い存在」なのです。
感覚としては「地球の裏側」。
オリンピックをやっているリオのようなものです。
しかも、当時はソニー生命だって知名度なかったし。
そして、友人、同僚たちは、これまた一様に「お前には無理!」「最も向かない仕事!」だと言いました。
そりゃそうですよ。営業経験ゼロ、お客様と対面で打ち合わせしたことも、電話で喋ったこともない。しかもプライドが高くて愛想が悪くて短気で出不精。
無理だと思われても仕方ありません。
でもね、私は「大丈夫!」って思っていました。
理由は2つ。
1つは「オレが平均以下の成績になるはずがない」という根拠なき自信。
そしてもう1つは、マーケティングプランナーとしての経験とスキル。
クライアント企業の商品やサービスを売るために作っていた企画書を、今度は自分を売るために作ればイイだけのことです。
その結果は・・2年半後の確定申告時には、「無理だ」と言っていた人たちの2倍以上の年収になりました。
当時は、子供はまだ生後半年だから、「父ちゃんダメだったよ」では済まされないし、売れなくて辞めちゃったら、「無理だ」と言っていた友人たちから、「ほら、俺の言った通りだろ」って言われちゃうだろうから、それなりに頑張ってやったけど、でも、会社に行かなくてイイし、自由な時間が一気に増えたし、上司も部下もいないし、解放感イッパイで仕事をしていました。
でも、その頃のことを今になって考えると、マーケティングを知っていて本当に良かったと思います。
・・と言うか、マーケティングを知らなかったら売れるはずがないのですが、知っていたからこそ、無駄な努力や回り道が少なくて済んだ。
だから「地球の裏側」みたいに感じられた場所でも、「ホント、来て良かった~」って思うことができたのです。
で、ここからが今日の「言いたいこと」。
金融機関の本社の社員さんは、何年に一度か転勤があります。
折角、4~5年掛けて人脈を作って来たのに、転勤して、慣れない環境で新たにゼロからスタートするって、大変だろうし、もったいないな~と思います。
でもね、私たちはそうじゃない。
生保セールスになったからと言って、私たちの周囲の環境が変わるワケじゃない。住んでる場所も、友達も一緒。
「それなのに、なぜ色々なことを変えちゃうの?」って、いつも思うのです。
それじゃ、真逆だよ!って。
わかりやすく言いましょうね。
あなたは生保セールスとして起業した・・その時、知らない土地で、友人も知人もほとんどいない場所で、仕事をしようとします?
絶対にそんなこと、しないでしょ?
よく知っている土地で、よく知っている人がたくさんいる、慣れた環境で仕事をした方が有利だってことは、誰でもわかるはずですよ。
だったら、すべてにおいて「今までと同じ状態」でいないとダメなんですよ。
言葉遣い、服装、髪型、消費行動、付き合う人たち・・こういうことを変えちゃダメに決まっているのです。
なぜならそれは、非効率この上ない行為なのだから。
短期間で廃業に追い込まれてしまう人の共通点として、イニシャルだかベースだか知らないけど、要するに友人知人たちから断られちゃう・・さらには、友達をなくしたり、連絡するのにメンタルブロックが掛かったりしちゃう・・ってケース、多いですよね。
なぜそうなるの?・・って、そんなの明らかなんですよ。
保険屋言葉を使ったり、保険屋風の見た目になっているから。
今まで自分が嫌がっていたこと(=保険の勧誘をされたり、つまらない話を聞かされたり、面倒な作業を強要されること)を、保険屋になった途端に、友達に対してしようとするから。
そんなあなたを見て、それまでのあなたじゃなくなっちゃってるのをお友達は肌で感じて、悲しんだり、腹を立てたりするから、売れないし、友達をなくすのです。
私は広告代理店勤務だったから、そういうのがとってもわかりやすかった。
後輩にアポ貰って訪ねて行った時、後輩が、「いや~、五十田さん、安心しましたよ~」って言いました。
「何が?」って聞いたら、「だって、保険屋さんになったって聞いたから、紺のスーツ着てヒゲ剃って七三分けにして来られちゃったら、どうしようかと思いましたよ~」って。
当然、私の答えも「んなワケね~だろが(笑)」。
言葉遣いもそれまでと同じ。
ノーネクタイもヒゲも同じ。
変わっちゃったら嫌われちゃうから、何~~~も変えませんよ。
会社に行かなくなって、自由な時間が増えて、さらに怠惰になっただけ。
生保セールスになる以前は、名刺交換なんてのも「必須」じゃない世界だったから、保険会社に入ったからと言って、名刺を出すようなこともしない。
アポ取って会社に行っても、受付で名乗ったりなんかしない。直接デスクまで言って、「来たよ」って言う。
初対面の人との挨拶だって「あ、ドモ。イソダです」みたいな感じ。
それをね、名刺をキッチリ出して、「はじめまして。○○生命の五十田と申します」なんてやったら、同業者からは「キモい~」って思われてしまうのです。
だからこそ、広告代理店時代は、「生命保険会社」という存在について「地球の裏側」のように感じていましたが、マーケティング思考で「そこで自分は何をやるのか?」ということを考えたら、地球の裏側でも何でもなく、「今まで以上に、ありのままの自分」でなければならない・・という正しい結論に素直に至ったのです。
そもそも「保険屋さんになって、友達をなくす」なんて悲惨な事態は、起業家意識が欠如しているから起こるのです。
友達ってのは、今までのあなたが好きだから、友達なんですよ。
それを、会社主導で「変身」「変節」しちゃうから、「もう友達じゃない!」になっちゃうのです。
そして、売れなくて苦しんでいる人ほど「会社が・・」という言葉を口にすることが多いのです。
あなた、生保セールスになって、「保険屋言葉」に慣れちゃってません?
金太郎飴みたいな見た目になっちゃってません?
会社主導で思考しちゃってません?
会社の教えるやり方に、大事なお客様を嵌め込もうとしてません?
「会社がこう言うから・・」なんてアホな言葉、使っちゃってません?
生保セールスになったら、サラリーマン時代よりもはるかに「素のままの自分」を出さなきゃいけないのです。
なぜなら、売っているのは「自分」だし、「会社の言うことを聞いてりゃて売れる」なんてことはあり得ないのだから。
サラリーマンなら、会社の言うことを聞かなきゃいけないことも多いけど、それで金貰ってんだから仕方ない。
でも、生保セールスは自営業だし起業家なのです。
だから、「自分らしさ」を出さなきゃ売れないのです。
会社の言うこと聞いたって金は貰えませんよ。
そもそも「売れない教え」なんだから。
ましてやそんなものに、最も大切なお客様を「嵌め込もう」なんてのは、顧客無視なのです。だから友達をなくすのです。
・・・ということに、マーケティング理論を知っていたからこそ22年前に気付くことができて、本当に良かったと思うばかりなのです。