悲惨な光景・・・

生命保険営業の本質!

 以前にもどこかに書きましたが、私、とっても悲惨な光景を目の当たりにしたことがあります。

 場所は私のお店「癒しの飲み屋 三洞」。
 まだ開店して間もない頃だったと思います。だって、以前からお世話になっていて、保険の契約者でもある先輩2人が、初めて店に来てくれた日ですから。
 たまたま、私の店の近くに住む友人がいるので、その人も誘って3人で行く・・・と連絡がありました。

 2人の先輩はサラリーマンですが、とっても洒脱な方。落語や将棋や和歌やクラッシック音楽に造詣が深く、そんなご縁で私を可愛がってくださる。もちろん2人とも小粋なイデタチでのご来店です。
 一方、ご近所のゲストのおじさんは、真面目そうな堅そうな人で、きっちり紺のスーツに身を固めておりました。

 で、カウンターの中に私が座っていて、向き合う形でテーブルが1つだけあります。そのテーブルに、契約者である先輩2人が、私に顔を向けて座りました。
 ゲストのおじさんは、私に背を向けて座っています。
 小さなお店ですからね、もう、ホント、目と鼻の先にゲストの「真面目おじさん」の背中がある。手が届くくらいの距離です。他にはお客さんはいなかったから、会話もよ~く聞こえます。

 先輩2人と真面目おじさんは久々に会ったようで、先輩が、「いや~、お変わりなくて、何よりですな~」なんて声を掛けています。でも、真面目おじさん、何だか緊張しているようで、口数も少ないし、表情も硬い。
 そんな様子を見ていて、「このおじさん、本当に先輩の友達なの?」と違和感を感じていたのです。

 まあ、とりあえず乾杯・・・となって、ビールを一口飲んで・・・会話が盛り上がるかな?と思ったら、真面目おじさん、何も言わずに、いきなりカバンの中から名刺入れを取り出して、びっくりするくらいの大きな声で、「私、転職したんですっ!」と「叫んだ」のですよ。
 ホント、「叫び」でした。
 目の前の先輩2人はもちろんのこと、私も驚きました。だって、あまりに切羽詰まった言い方だったから。
 そして、名刺を2枚手に持って立ち上がって、これまたびっくりするぐらいの大声で、こう言いました。

 「わたくし、アリコジャパン(今のメットライフ)という会社に転職しましたっ! アリコジャパンの〇〇と申しますっ! よろしくお願い申し上げますっ!!!」

 そして、深々とお辞儀です。

 もうね、その姿は、緊張して右手と右足が一緒に出てしまったような感じ。だって、「〇〇と申しますっ!」って、そんなこと、言わなくたってわかってるしね。

 先輩2人も、あまりの出来事にボーゼンとしていましたが、浅見さんという先輩が我に返って、「まあまあ、堅い話は抜きってことで・・・とにかく飲みましょうよ」と言ったけど、真面目おじさんの緊張は溶けません。顔は見えないけど、直立不動で背中がコワばってるんだもん。
 真面目おじさんがようやく座ったので、「まあ、久しぶりに会ったんだからさ~、飲みましょうよ。それで、食べ物注文しましょうよ。この店は何を食っても絶品なんですよ。ここは初回だけど、三洞先生の弟さんが作る料理は、お父上の店で何度も食べてるからね~」。

 それで普通の飲み会になるかと思ったら・・・真面目おじさん、浅見さんの言葉なんか全然聞こえていないようで、これまた大声で、いきなり、こう言ったのです。

 「皆さんは(・・・って、目の前には2人しかいないだろ?)、生命保険にお入りですかっ! 生命保険について、どのようにお考えですかっ! 生命保険にお入りの方にとって、生命保険について考えることは、非常に大切だということを、おわかりですかっ!」

 ・・・もう、全員、ドン引きです。
 でも、衝撃から立ち直った浅見さんの次の一言が秀逸でした。

 「もう、つまらない話はやめて、飲みましょ!」

 真面目おじさん・・・瞬殺です・・・。

 真面目おじさん、一瞬で撃沈した挙句、しばらくして「私たちの生命保険の担当者」だと私を紹介されて目を白黒させて、「これ、差し上げますよ」と、私の著書「生命保険の正しい見直し方」を進呈されて「え~っ! あっ、いや、その・・・ゴメンナサイ」の状態になって・・・そしてこの日、2人の友達をなくしたのです。

 悲惨な状況でしょ?
 でもね・・・あなたのトークも、ビジネスのやり方も、真面目おじさんと五十歩百歩じゃないの?