まずは本の紹介から。
☆「脳科学マーケティング100の心理技術」(ロジャー・ドゥーリー)☆
この本のChapter10のタイトルが「脳が喜ぶマーケティング」。
どうすればお客様が喜ぶのかということが書いてある。
嫌われちゃうことが多い生保セールスのビジネスにとっては、役に立つことがたくさん書いてあります。
で、100の心理技術の内の71番目が「顧客の『考える』手間を省く」。
この「顧客の考える手間を省く」は、他の業界では、理論や手法として理解していなくても、「そうしないと売れないから、実行している」という人はたくさんいます。
ハウスメーカーや不動産業の営業さんなんかにとっては必須でしょうし、何か月か前に私自身もパソコン売り場でこれをやられました。
では、該当箇所を引用します。
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複雑な決断になると、その分余計に考えたり検討したりしなくてはならないことは直感的に理解できるし、疑う余地もなさそうに思える。しかし、少なくともある種の状況においては、必ずしもそうではないことを研究が証明している。
アムステルダム大学で人間が意思決定をする過程に関する研究が行われ、意外な結論が導き出された。単純な意思決定の場合じっくり考えたほうが最良の答えが見つかるが、複雑な意思決定の場合、直感で行ったほうがうまくいく。
(中略)
調査の結果、シンプルな商品を購入した人は、じっくり考えて決めたと思えた場合は自分の意思決定に対する満足度が高いが、複雑な商品を購入した人はその逆であることが判明した。複雑な商品を購入して高い満足度を得ているのは、意識的な思考をあまりしなかった人たちだったのだ。
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生命保険は、購買頻度が低く、購入単価が高い商品の代表です。
セミナーでは、「だからこそ・・しなければならない」という言い回しを2回使いますが、「複雑な商品」という意味においても、まさにその代表ですよ。
だからこそ、売るためには「考えさせてはいけない」のです。
私は元々広告屋だし、マーケティングプランナーだから、この「考えさせない」の重要さははっきりと認識していました。
なぜなら、広告には「考えさせない」の機能があるし、コピーライティングにおいても「あれこれ迷わせずに買わせる」コピーを書くことが、そのままスキルになるからです。
家とかパソコンを買う時のことを考えてみてくださいよ。
いくら考えたって絶対に全部は検討できないでしょ?
全部どころか、ほとんどのケースにおいて、ほんの断片しか検討できないし、できないままに購入決定に至るのです。
でね、こういうことは、細かいことを書き始めるとキリがなくなっちゃうから、わかりやす~く言いましょうね。
「複雑な商品を購入して高い満足度を得ているのは、意識的な思考をあまりしなかった人たちだったのだ」って書いてあるでしょ。
(A)「ああ、あなたは信用できる人だってわかったから、あなたの言う通りに保険に入るよ」と言って、すぐに契約してくれた人
(B)あれこれとしつこく色々なことを質問し、たくさんの設計書を出させ、さらに何度も追加の質問をしつつ、なかなか契約せず、その間に他社の設計書まで集めて、半年後にようやく「おたくに決めました」と言って契約したグズで優柔不断な人
Aの人の方が満足度が高いのは明らかですよね。
お客様が「生命保険に入る」って決めるのは、コップにCSI(顧客満足度指数)がポタポタと溜まって行って、それがあふれた瞬間なんですよ。
従って、この「満足度」というのは契約・売り上げに直結するのです。
だからこそ、満足度の高いセールスをしなければならない。
そうしないと売れないのです。
そのためには「考えさせない」ことが重要・・と言うか、これは明らかなスキルなんですよ!
そうでしょ?
プレゼンテーションが終わった瞬間に「決めました!」って言わせるのと、「2~3日検討させてください」って言われちゃうのと、どっちがスキルが高いのか・・って話なのです。
だからね、「一緒に考えましょう」なんてセリフは、もうホント最悪なのです。
この短い言葉の中に「あなたを売れなくする要素」が2つも入ってる!
1つはポジショニングの問題。
これじゃ、同等のポジションになっちゃうでしょ。
同等では売れないのです。上から言わないと。
そして「考えましょう」・・。
考えさせちゃダメなのに「考えましょう」・・。
私のセミナーでは「『説明する』という言葉は、書き言葉でもしゃべり言葉でも禁句」と言っています。
理由はとっても単純明快で「人は説明されるのが嫌いだから」。
「考えましょう」も同じですよ。
考えさせたら満足度が下がる(=成約率が下がる)のだから、明らかな禁句なのです。
長く楽しく売り続けることができている人は、お客様に考えさせません。
生命保険という複雑な商品を「私から」買うべきシンプルな理由を、分かりやすく伝えるスキルを持った人・・これが「売れる人」なのです。